夜獣2-Paradise Lost-
「ぐう」
両頬に痛みが走り、二歩ほど後方へ下がる。
歯が二本程度やられたようだ。
しばらくすると、足に力が入らなくなり床へとしゃがみ込んだ。
「僕は、負けるわけには、いかない!」
上を見上げると、海江田は立ったままだった。
アゴに決まったはずの拳だったが、ギリギリ持ちこたえているところか。
それとも、当てた場所をミスしてしまったか。
「乾、この事を、言わなかったな」
何かを呟き、身体を震わしている。
海江田はゆっくりながらにも僕に近づいてくる。
そして、僕の襟を掴んで持ち上げる。
アゴにダメージがあるというのに、どこにそんな力が残っているというのか。
「俺に勝って、乾に近づいてどうする?」
攻撃してくる気配はない。
僕自身も先ほどの行動で、ほぼ力を使い果たしたといってもいい。
「倒す。いや、殺す。それためにはお前から居場所を聞き出さなくてはならない」
力は残っていないのに、憎悪だけが膨れ上がっている。
「言うのは自由だ。だが、殺されるのがオチだ。これは俺からの忠告だ。乾には近づくな」
「海江田、お前は何のために生きている?」
「何?」
「お前が目的を達するために、すべき事は止めないはずだ」
「時には止める事も一つの道だ。それを選択する事が大人だ。そう、お前のようにリスクの高すぎる物を手に入れる事は現実的ではないし、堅実でもない。そして、余裕のなさが敗北の一つだ」
「お前には、解らない。僕はすでに選択のない世界にいる」
僕は海江田の襟を掴む。
「だから、教えろ!乾はどこにいる!奴を殺すためなら、自分の命などおしくはない!」
海江田の瞳は、何の感情も帯びないままに僕を見下ろしている。
「自分の選択の幅を狭めているのは、自分自身だという事を知れ。それと、残念だったな」
両頬に痛みが走り、二歩ほど後方へ下がる。
歯が二本程度やられたようだ。
しばらくすると、足に力が入らなくなり床へとしゃがみ込んだ。
「僕は、負けるわけには、いかない!」
上を見上げると、海江田は立ったままだった。
アゴに決まったはずの拳だったが、ギリギリ持ちこたえているところか。
それとも、当てた場所をミスしてしまったか。
「乾、この事を、言わなかったな」
何かを呟き、身体を震わしている。
海江田はゆっくりながらにも僕に近づいてくる。
そして、僕の襟を掴んで持ち上げる。
アゴにダメージがあるというのに、どこにそんな力が残っているというのか。
「俺に勝って、乾に近づいてどうする?」
攻撃してくる気配はない。
僕自身も先ほどの行動で、ほぼ力を使い果たしたといってもいい。
「倒す。いや、殺す。それためにはお前から居場所を聞き出さなくてはならない」
力は残っていないのに、憎悪だけが膨れ上がっている。
「言うのは自由だ。だが、殺されるのがオチだ。これは俺からの忠告だ。乾には近づくな」
「海江田、お前は何のために生きている?」
「何?」
「お前が目的を達するために、すべき事は止めないはずだ」
「時には止める事も一つの道だ。それを選択する事が大人だ。そう、お前のようにリスクの高すぎる物を手に入れる事は現実的ではないし、堅実でもない。そして、余裕のなさが敗北の一つだ」
「お前には、解らない。僕はすでに選択のない世界にいる」
僕は海江田の襟を掴む。
「だから、教えろ!乾はどこにいる!奴を殺すためなら、自分の命などおしくはない!」
海江田の瞳は、何の感情も帯びないままに僕を見下ろしている。
「自分の選択の幅を狭めているのは、自分自身だという事を知れ。それと、残念だったな」