夜獣2-Paradise Lost-
伍:「上手くやってんね」
その後、海江田は救急車に乗せられ、僕は容疑者として警察に同行した。
僕が留置所から解放されたのは、三日後の正午。
警察署から出ると、制服姿の渚がいた。
「すいません。少し、時間がかかりました」
「真相に繋がる唯一の手がかりを失った。真っ白だ」
今だに虚空の中にいる僕。
失った物による反動が大きい。
「あなたが、以前のように抜け殻に戻るのならそれでも構いません」
「何もなくなったんだ。奴だけが」
「そこまでの拘りに、意味があるのですか?」
「何?」
「私は復讐するなとは言いません。それが間違えでもあなたにとっては正しいですから。復讐しろとも言いません。道徳としてはそれが正しいですから」
淡々と、言葉を紡いでいく。
「選択するのはあなたです。誰しもが失望したとしてもあなたの傍にいます。ここで、失った物と共にあなたが生き方を変えるのも自由です」
「お前は、どう思う?」
「私の考えを言ったところで、耕一さんの気持ちに訴えかける『何か』はないと思います」
「答えろ」
「解りました」
二歩ほど歩いた後に、こちらを見る。
「私は満足する方に歩いて欲しいですね。いえ、耕一さんは必ず自分を満足させる方向に歩きます。今は手がかりを失って間もないですけど、人から言われて意見を変えるとは思えません。何故ならば、あなたの心の奥底はすでに光が差さないほどの暗いですから」
虚空にいるのにも関わらず、密かに佇んでいるは黒い闇。
渚に言われて確かめるように、拳を握り締める。
まだ動いている。
指も、腕も、脚も、心臓も、脳も。
「確かに、な」
僕が留置所から解放されたのは、三日後の正午。
警察署から出ると、制服姿の渚がいた。
「すいません。少し、時間がかかりました」
「真相に繋がる唯一の手がかりを失った。真っ白だ」
今だに虚空の中にいる僕。
失った物による反動が大きい。
「あなたが、以前のように抜け殻に戻るのならそれでも構いません」
「何もなくなったんだ。奴だけが」
「そこまでの拘りに、意味があるのですか?」
「何?」
「私は復讐するなとは言いません。それが間違えでもあなたにとっては正しいですから。復讐しろとも言いません。道徳としてはそれが正しいですから」
淡々と、言葉を紡いでいく。
「選択するのはあなたです。誰しもが失望したとしてもあなたの傍にいます。ここで、失った物と共にあなたが生き方を変えるのも自由です」
「お前は、どう思う?」
「私の考えを言ったところで、耕一さんの気持ちに訴えかける『何か』はないと思います」
「答えろ」
「解りました」
二歩ほど歩いた後に、こちらを見る。
「私は満足する方に歩いて欲しいですね。いえ、耕一さんは必ず自分を満足させる方向に歩きます。今は手がかりを失って間もないですけど、人から言われて意見を変えるとは思えません。何故ならば、あなたの心の奥底はすでに光が差さないほどの暗いですから」
虚空にいるのにも関わらず、密かに佇んでいるは黒い闇。
渚に言われて確かめるように、拳を握り締める。
まだ動いている。
指も、腕も、脚も、心臓も、脳も。
「確かに、な」