夜獣2-Paradise Lost-
僕と渚は少し距離を置いていた。

「耕一さん、生きているって素晴らしいですね」

「気でも狂ったのか?」

「酷いですね」

本気で怒っているわけでも、落ち込んでいるわけでもない。

「こんなにも憎しみに溢れている、それが、素晴らしいのか?」

「耕一さんの主観で見れば、醜くく感じるかもしれませんね」

「僕にとっては何も終わっていない。そんなもの、当たり前の話だ」

「ですが、あなたの生きる糧になっています」

「感謝の言葉が足りないとでもいうのか?」

能力に目覚めさせたのは、渚だ。

「ふふ、ほしい物は手の内にあります」

「そうか」

追及する気はない。

そして、風呂から急いで出るつもりもない。

「確か、お前の名前はラヴィヌスだったか」

ふと、口をついて出た言葉。

何故、口に出したのかは定かではない。

「私の本名、まだ覚えていてくれたんですね」

「そんな妙な名前を忘れるわけが無い」

「そうですね。地球にきてから、つくづくそう思ってしまいます」

「お前の星には、そんな名前の奴らがほとんどなのか?」

「ええ」

「そうか」

「ふふ、どうしたんですか?私の事を口に出すなんて、珍しいですね」

自分でもどうかしていると思う。

今考える事は、自分の成長。

そして、乾を殺す事だけだ。
< 66 / 112 >

この作品をシェア

pagetop