夜獣2-Paradise Lost-
学校は静寂に塗り潰されて、心臓の音が大きく聞こえる。

生きている音だというのなら、嫌悪感を感じてしまう。

「学校で何をしたいんだろう」

鼓動を抑えるように、胸を手で握る。

忌まわしい記憶がある影響は強く、治まる気配がない。

「はあ、はあ」

息が荒くなり、立っているのが辛い。

何故、学校に来てしまったのか。

何かを求めているのか?

答えを得るために、学校の校門を越える。

私服の僕は学校の手帳がないから追い出されるかもしれない。

でも、答えが在るのなら知りたいんだ。

校門からしばらく歩いた中庭には扉があり、変わっていなければ向こうに大木がある。

意識はしてないが扉を開ける。

光の下、木々のせせらぎが穏やかに聞こえてくる。

記憶を忘却してしまいそうな程の包容力を持っている大木に、身を任せたくなる。

しかし、過去を打ち破ることなく、一瞬の灯火だった。

灯火は風が吹けば簡単に消えてしまう。

「雪坂が一緒にいたいと思うのも分かる気がする」

体が癒しを求めていたからかもしれない。

しかし、癒しの空間を消すように、扉を閉めてしまった。

精神は癒しを求めていないのかもしれない。

業火の中にいる事を望んでいるのか。
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