夜獣2-Paradise Lost-
「ほら」

アキラから投げられた缶コーヒーを受け取る。

以前のような剛速球ではない。

缶コーヒーの蓋を開けて、喉の奥へと流し込む。

僕達は街から少し離れた公園に移動していた。

街よりも闇の濃い公園のベンチで、二人して座っている。

「街で何してたの?」

「歩いていた」

「そ」

アキラは目を細めながら、ため息をついた。

「雪坂さんの家で迷惑かけずに生活してる?」

「さてな、渚はそうは思っているかもしれない」

僕の発言は自分勝手なもので、人の気分を悪くする物だと解っている。

だが、それで態度を変えるつもりはない。

「渚ねえ、ふうん」

今度は何かを噛締めるようにニヤケ面で頬を釣り上げる。

「耕一にしては、上手くやってんね」

「お前こそな」

顔を何度となく変え、最終的には真顔に戻した。

「耕一はさ、世の中は自分の都合よく事が運ばないのは、何でか考えた事がある?」

唐突な質問によって、アキラの現状がどういう物なのか、少しばかり理解した。

「負け犬の遠吠えだ。そんな考えを持ったところで現状は変わらない」

「そう」

「他の奴らは都合よく進んでいる。お前はそいつらよりも状況を変えるのが下手糞なだけだ」

僕は、乾の手の上で遊ばれているだけなのかもしれない。

だが、それを覆せるのは、意志が砕けていない自分自身だけだ。

「何も変えられないのなら、現状で満足していろ」

空になった缶をゴミ箱へと捨てた。
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