夜獣2-Paradise Lost-
「耕一、私さ、不倫してるんだ」

突然の告白だったが、大した心境の変化はない。

「仕事が上手くいかなくてね。あの人が励ましてくれてさ」

僕は何も言わない。

「身体の関係も持った。奥さんと子供がいる事は知ってたけどね」

アキラも立ち上がり、飲み終えた空の缶を捨てる。

「奥さん、知ったら悲しむだろうね」

自嘲気味な笑いを浮かべながら、何かを思っているようだ。

「気は済んだか?」

「何も、言わないんだね」

僕はアキラの元へ歩んでいき、胸倉を掴み上げる。

「他人の不幸を嘲笑うような生き方に疑問を持つな」

手を離して、僕は背中を向けた。

アキラのやっている事は、自分を不幸に叩き込み、他人も不幸に叩き込む事だ。

だから、何だというのだ。

関係を続けているのなら、状況に甘んじているという事に過ぎない。

誰も救われない。

他人を不幸に落とし込み、自分の都合よく物事を進ませる事をしたいというのなら、人間を止めるしかない。

時間の止まったアキラから、僕は離れていく。

他人を不幸にする僕ではあるが、アキラはすでに不幸の輪の中にいた。

「関係、ないな」

家族との縁は切れている。

これ以上近づく事はないし、関係のない話だ。

きっと、そうだ。

能力者探しの意欲が殺がれ、足取りは街ではなく家へと向けていた。
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