夜獣2-Paradise Lost-
「おかえりなさい」

扉を開けると、そこには渚が変わらぬ姿で立っていた。

「起きていたのか」

「ええ」

「そうか」

靴を脱いで、廊下を進んでいく。

後ろからは渚が着いてきている。

「用があるのか?」

足を止めて、渚へと振り返る。

「街の様子はどうでしたか?」

「変わりはない。能力者もいない」

関係のない事をベラベラと話す必要はない。

「そうですか」

俯き加減で何かを考えた後に、渚が顔を上げた。

「次は、私も同行します」

「何?」

「私は能力者を見分ける力があります。お役に立てると思います」

渚の協力があれば、多少なりとも変化は出るか。

「何故、先に言わなかった?」

「あなたの好きなように動いていただきたかったから」

渚は僕を使って遊んでいるのか。

僕の意向を最優先にしているので自覚はないのだろう。

何故か、色々な事の苛立ちが胸の奥から湧き上がる。

「来い」

僕は、渚の腕を引っ張っていく。

「耕一さん?」

決して、渚だけのせいではなかった。

収まらなかった。

何もかもが気に入らなかった。

僕は、渚の身体を自分の部屋のベッドに押し倒す。
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