夜獣2-Paradise Lost-
黒髪を呼び、メニューを伝える。

「私は、乙女の朝食を」

「乙女の朝食は、ホットかアイスでお選び出来ます!」

コーヒーの事だろう。

「アイスで。耕一さんは」

「ジャパンランチ」

「いいんですか?」

黒髪と渚の二人は驚きを見せているが、何が何だかよく解らない。

値段も高くはなく、問題はどこにも見当たらない。

「何がだ?」

「いえ、何でもありません。じゃあ、それでお願いします」

「かしこまりました!」

嬉々とした声を上げて、カウンターに注文を告げに行く。

茶髪の女は訝しげに眉を動かし、パズルの組み立てを止めて厨房へと入っていった。

「少し、お前の事を聞きたい」

「私の、ですか?」

予想していなかった質問だったのか、全身の動きを止めた。

僕は気になっていた。

あの黒い瞳の中にある闇が。

僕に闇があるのなら、渚にも闇が存在している。

生きた年数分でいえば、僕よりも濃い可能性がある。

「つまらない話だと思います」

「お前は僕の事を知っている。だが、僕はお前の事を知らない。それが、気に入らない」

俯き加減になっているのは、過去の事を思い出しているのか。

「何をお聞きになりたいんですか?」

「何故、そんなに悲しい目をしているのかだ」

「耕一さんには、そう見えているのですか」

「少し観察すれば、解る」

何故だ?

渚の事を聞いて、何かが変わるとでもいうのか?

しかし、自分の口を突いて出た言葉を戻す事はなかった。
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