夜獣2-Paradise Lost-
「生が儚いモノだと気付いたのは、この星に来てから」

渚がゆっくりと語り始める。

「幾年もの時を得て生と死を見てきました」

「最初は、関係のない世界だと思っていました。調査を終えた上で宇宙船さえ直れば帰れるのですから」

「しかし、宇宙船は直らないまま、世界に足を踏み入れてしまったんです」

「優しくしてくれた人もいました。時には身体が目当ての人もいました。ですが、誰にもあるのが死という避けられない定め」

「どんな事情であれ、寿命の短い人々は私よりも先に死んで行きました」

「それは、他人だけではなく、私の子孫達も然り」

「きっと、そんな人々の死を見てきたので、自然と染み付いた物なのかもしれません」

最後に僕に見せたのはぎこちない笑顔だ。

「そうか」

人々の死を見るのは孤独を避けるためだ。

死が嘆き悲しむ物であるのなら、一人になれば見なくて済む。

渚は孤独にはなれなかった。

それも、悲しい事であり、辛い事だからだ。

話によれば、最初から渚は孤独を恐れていた事になる。

孤独を感じないというのであれば、人と関係を持つ事無く生きて行けばいい。

ラヴィヌスという名からすれば、妥当なところだろう。

一人では誰かを愛するという行為は出来ないのだからな。

だが、それだけではない。

長年生きてこれば、奇麗事だけでは治まらない事が多々ある。

嫉妬、裏切り、様々な出来事に遭遇する事となる。

見たところ、渚には感情がある。

嬉しい事よりも、悲しい事のほうが多い生き方をしてきたのかもしれない。

「お待たせいたしました!」

辛気臭さが漂う空間に、黒髪がメスを入れた。
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