夜獣2-Paradise Lost-
黒髪が去った後に見た物は、目眩を起こしてしまうような量の食事。

渚が注文した『乙女の朝食』は、トマトやレタスの野菜とチーズが入ったサンドウィッチが、三つ並んでいた。

隣には黒々としたアイスコーヒーがグラスの中に入っていた。

「私、猫舌なんです」

どうでもいい情報に感謝するよりも、自分の食事の心配が勝った。

「何だこれは?」

「ジャパンランチです」

上には焼き蕎麦やらアイスクリームやらが混合して、皿の上に満載だ。

「知っていただろう?」

「ええ」

「お前は、僕が聞かなくちゃ説明しないのか?」

「沢山食べて、戦いに備えてください」

淡々と告げた後に、サンドウィッチに噛り付いた。

食べ終わらなければ次に進む事が出来ないので、食事を始める。

味の良し悪しなど関係はない。

無言で箸を進めながら、エネルギーを胃に詰めていく。

完食した時には、空になったアイスコーヒーの氷が解けていた。

「く」

今の状態では、戦いどころではない。

「よく、食べましたね」

「どうでもいい。行くぞ」

しかし、渚の言う事に従ったので、長居は無用だ。

「すぐに動くのは危険かと思います」

「関係ない」

心配そうな顔をする渚に背を向ける。

何かを訴える瞳を見ないようにしたかったからだ。

逆流して吐しゃ物になるのを押し留めて、店を後にした。
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