夜獣2-Paradise Lost-
街中の人の数は変わらず、疎らである。

「能力者はいるか?」

能力者に繋がる糸を僕は感じ取れない。

「います、ね」

能力者を見つけたが、渚は嬉しそうな顔をしていない。

だが、今は渚の気持ちは関係ない。

能力を利用するだけだ。

「どこだ?」

「はっきりと特定するには、時間がかかります」

目を閉じて、場所を探る。

「キャアアアアアアアアアアアア!」

その時、悲鳴が辺りに木霊し、人々は僕たちを通り過ぎていく。

「何が起こった?」

逃げ惑う人々の背後を見みると、白昼の街中には違和感を漂わせる人間がいた。

白のランニングシャツに青のジーパン、年齢は四十ぐらいだろうか。

フケの溜まった頭に無精ひげを生やして不潔さを漂わせながら、人々を追いかける。

それだけなら、人は逃げないだろう。

しかし、手には刃渡り三十センチ程度の鉈を所持している。

薬にでも手を出したのか、男の目は常人の者ではない。

鉈男の近くには、逃げ遅れた犠牲者達が倒れている。

ニュースで流れてもいい程の惨事だろう。

「能力者、ではないな」

能力者であるならば、鉈を使う必要がどこにある。

「ええ」

能力者探しの邪魔になるのなら、破壊するまでだ。

鉈男に向おうとしたところで、鉈男の前に一人の男が立ちふさがった。
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