夜獣2-Paradise Lost-
「更に質問だ。君には生きる資格があるか、YES OR NO?」

能力者が手刀を作り出し、首筋にそっと当てる。

鉈男に理性はなく、痛みに夢中だ。

答えられるはずがなかった。

「困った男だ」

出来の悪い生徒を見たかのように嘆息し、頭を抱える。

「答えはNOだ。何故なら、君には価値が無い。価値のある命は人の基準によって変わるが、大半の人が君の命に価値はないと思うだろう」

能力者は鉈男を見下した視線をくれている。

「君は人に害を成す社会の屑に成り下がった。君のような屑にリサイクルは通用しない。死ぬ事が世のため社会のためというものだろう」

鉈男は喚く力すら、無くなってきている。

能力者に鉈男の命を何もする事無くくれてやると、闘う理由がなくなる。

動こうとしたが、渚に腕を捕まれた。

「耕一さん、間もなく警察の方々が到着します」

渚の言うとおり、事態を収拾させるためにパトカーのサイレンが遠方から聞こえてくる。

「時間がないか。一つ言っておく、君のような人間が義手で暮らしていくという根性があると思うかね?どっちを選べば楽かなどすぐにでも解るはずだ」

警察と関わる事を避けたのか、足と手を引いて能力者は去っていく。

「彼が能力者であるという事は大きな収穫だと思います。今は、退きましょう」

僕達の近くに、今朝乗ってきた白の軽自動車が停車した。

渚が予め呼んでおいたのかもしれない。

「今の状況に成る事が解っていたのか?」

「いえ、相場さんには近くに待機していただいていたので、鉈を持った方と能力者を発見した時に連絡を入れておいたんです」

「そうか」

絶対に何かが起こるとは思っていなかったという事だろう。

しかし、惨事が起こったおかげで能力者の能力を知る事が出来たのは、幸いだったかもしれない。
< 82 / 112 >

この作品をシェア

pagetop