夜獣2-Paradise Lost-
車中で考えていた。

再び能力者と出会う方法は、身元を調べる事だ。

しかし、再び出会ったとして、能力者の前に立ちふさがるのは、心の癒しを能力者から得ているアキラになる可能性が高い。

僕が乾に対して報復を糧にして生きているとすれば、アキラは能力者にもたらされる平穏を糧に生かされているといってもいい。

誰しも平穏は崩されたくは無いだろう。

『耕一はさ、世の中は自分の都合よく事が運ばないのは、何でか考えた事がある?』

アキラは何かを変えたくても変えられない状態に陥っていた。

現状維持を貫かなければ、自分を保てないのだろう。

何かに縋る事でしか、生活出来ない精神状態か。

「それでも、奴を倒す」

アキラが敵に回るとすれば、能力者が二人。

更なる強さが手に入るといってもいい。

「あの能力者の身辺調査、出来るか?」

「構いませんが、本当に対峙するのですか?」

「あの能力者は狂気を孕んでいる」

乾に共通しているといってもいい。

容赦のない姿勢は、僕を強くさせる材料としては十分だ。

更には、場所によって能力を食らえば一撃で死ぬ。

良い死合い相手になりそうだ。

「耕一さん、危険かと思います」

哀しみの黒で見ているものの、注意を聞こうとは思わない。

「お前は勘違いをしている」

「そうでしょうか??」

「僕は一度死んでいる。そして、あの能力者も死んでいる」

渚の黒が伏目がちになり、睫で隠れてしまう。

「『奴』を超えられるのなら、幾らでも身を焦がしてやる」

しばらくの間を開けた後に、渚が僕の顔を見て頷いた。

「解りました。ニ、三日かかりますが、よろしいですか?」

「構わない」

気付けば、車は学校付近を通り過ぎようとしていた。
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