夜獣2-Paradise Lost-
「花を置いたのは、渚か?」

「ええ」

「そうか」

子孫の行動によって無関係な人間が死んだ。

直接的な殺人ではないが、間接的な自分の罪を償うために花を置いているのか。

僕は花の前に座り、手を合わせる。

「あいつは、お前のために殺してやる」

言葉に呪詛を込めながら、思い出す。

高校生だった頃は、生きていた。

眩しい笑顔を、時には悲しい顔をしながら。

しかし、今はいない。

殺された。

『奴』に、肉片にされて、元に戻らなくなった。

「絶対に強くなる。強くなって、殺してあげるから」

以前のように取り乱す事はないものの、全身を占めている物は変わらない。

憎悪と殺意。

弱かった自分が悪かった。

何も覆せない弱者なのに、危険な物に触れようとした自分が愚かだった。

「耕一さん」

「他の言葉は要らない」

何かを告げようとした渚を黙らせる。

僕は静かに立ち上がり、歩き始める。

渚も黙って後を付いてきている。

辿り着いた先は、誰もいない静かな屋上だった。
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