夜獣2-Paradise Lost-
帰る途中、一階で鞄を持った桜子と鉢合わせする。

「雪坂さんと、耕一!?」

出来るだけ、顔を合わせたくは無い人間と会ってしまった。

「お姉ちゃんの時みたいに学校で危険なことを起こすつもり?」

今は、取り乱している様子は無い。

「僕にとっては必要なことだ」

しかし、手がかりはなかった。

「本気で何考えてるの?ここは学校だよ?」

「年齢が若いというだけで、他と変わらない」

能力者がいる世界に危険が無い場所は存在しない。

どこでも、戦場になる可能性はある。

「死にたくなければ街から出ろ」

「出ない、あんたの言う事なんか絶対聞かないから!」

「好きにしろ」

僕が通り過ぎ、渚は会釈をして後を続く。

背後の桜子から憎しみの念が肌に伝わってくる。

「あんたより先に、お姉ちゃんの仇を討つ!

桜子の一言が、進む足を鈍らせた。

「今までやってきた事を、無駄にしてやるから!」

「お前じゃ乾には勝てない」

それ以前に、他の能力者に殺される可能性もある。

「知らない!私はあんたの言う事なんか聞かない!」

桜子は涙ぐんだ声になりながらも、訴えかけてきている。

「お前が乾を討つというなら、僕の邪魔をすると言う事になる」

邪魔者は排除しなければならない。

僕は敵である桜子を捉えるために振り返った。

「耕一さん、行きましょう」

渚は僕を止めようとする。

しかし、僕は拳を握り締めていた。
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