夜獣2-Paradise Lost-
柒:「それでいい」
修行は怠らずに過ごし、二日が過ぎた。

昼、僕は自室のベッドで座っていた。

扉が二回ノックされる。

「よろしいですか?」

「ああ」

中に入ってきたのは、制服姿の渚だ。

数枚のA4用紙が手の中にある。

「調査が済んだのか?」

「ええ」

「奴は何者だ?」

「甘粕史郎、四十歳。大手に務めており、最近部長に昇進したそうです」

資料を確認しながら、告げていく。

「それで」

「妻に子供が二人、家庭に問題はないようですが」

「不倫相手がいる、か」

「知っているのですか?」

「ああ」

不倫相手の事は熟知している。

「他に情報は?」

「甘粕氏は幼少時に虐待を受けており、そこで能力を開眼しました」

しかし、能力の開眼は死にかけなければ、起こらない。

「彼の両親の虐待は近所でも有名になっていた程、酷いモノだったそうです」

「死にかけの状態まで虐待を受けた、という事か?」

「ええ」

「だが、虐待が続けば能力開眼も意味はないだろう」

「それが、七歳の彼を残して、彼らは惨殺死体となって発見されたようです」

親に恨みのある者の犯行とするならば、最初に思い浮かぶのが息子である甘粕史郎。

しかし、子供である甘粕が道具もなく殺す事は出来ないと思うだろう。

だが、甘粕は能力者。

決して、不可能な事ではない。

同情するつもりは無い。

例え、虐待を受けていようが、親殺しをしていようが、僕には関係のない話だ。
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