夜獣2-Paradise Lost-
「何が言いたい?」

「あなたは、自身の力を信じていますか?」

「能力とそれを使う肉体さえあれば、恐怖に襲われても勝てる」

「私はあなたを利用出来なくなるかもしれませんね」

言いたい事を告げると、背中を向ける。

「また、一緒にご飯を食べられる日が来るといいですね」

渚はA4用紙を置いて、僕の部屋から出て行った。

「殺される、とでも言いたいのか」

甘粕がどんな男だろうとも、やるだけだ。

強き能力者を倒して、次なる世界に辿り着かなければならない。

A4用紙を手に取り、内容を見てみる。

渚の言っていた事がほぼ全てだ。

そこには、『神崎アキラ』の名前も書かれている。

アキラと不倫関係が始まったのが、一昨年。

何度と無く甘粕と出会っている。

それはアキラの気持ちが、引き抜けない程の根を張り、依存している事を表していた。

仕事に慣れ、嫌な事を受け流して付き合いが上手く出来るようになっていたとしても、離れる事は難しい。

「不幸な女だ」

しかし、どこでこのような事を調べたのかは解らない。

誰かに見られていたのかもしれない。

ここまで来ると、渚のネットワークの広さは驚異と言える。

A4用紙を投げ捨て、ベッドの上で横になる。

甘粕の会社が終わるのは、十七時。

戦いまでの間、少しでも体力は温存しておきたい。

僕は眠りの世界へと入り込んだ。
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