夜獣2-Paradise Lost-
「資格があるかどうかなど、話すまでもない」

今、甘粕が決められる事は、僕をどう仕留めにかかるかだ。

「答えはNOだ。通り魔は世にのさばっていてはならない。よって生きている価値はない」

甘粕はゆっくりと確実な足取りで、死神の鎌を持ちながら歩いてくる。

全身が白い空気に覆われており、どこを狙っても玉砕出来る。

「神崎アキラ」

僕が呟くと、甘粕が足を止める。

「神崎君を知っているのか?」

「お前が家庭を顧みず、何をしているかまで知っている」

「君は何を言っているんだい?」

「お前がアキラと身体の関係を持とうがどうでもいい、お前が強い能力者だから闘うだけだ」

拳を握り締めて、構えを取る。

「そういえば、彼女は弟がいると言っていた」

アキラとの思い出を思い出しているようだ。

「弟が通り魔か。だが、そこに彼女の罪は無い」

再び歩き始める甘粕。

「彼女は痛みを味わう事になるが、仕方の無い事だな。通り魔は生かしておく必要がない」

「自分の事を棚に上げて、よく言う」

笑いがこみ上げてくる。

「自分の気に入らない物を躊躇いなく殺す事と、通り魔とどう違う?」

「私には世のため、人のためという大義名分がある」

「下らない、立派な理由でもつければ人殺しが許されるとでも思ってるのか?」

「ならば、問おう。君たちのような人間に犠牲になった人はどうなる?」

「運がない。それだけだ」

そう、運がなかった。

理不尽だらけの世界。

力で覆す事が出来なければ、運の無さを悔やむしかない。

「運がない?そうかそうか、他人にすればそれで済まされるのか」
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