夜獣2-Paradise Lost-
当事者、親族、友人以外は他人事でしかない。

他人は知らぬところで通り魔にあっていようが死のうが、心を痛まない。

ニュースで知ったところで、自分は気をつけようと思うのが関の山だ。

もし、近くにいたらどうなっていたか?

もしかすると、助けてくれる人間はいるかもしれない。

いや、どうでもいい話だ。

僕は、甘粕史郎という能力者と闘う。

どんな理屈を並べようとも、それだけは変わらない。

「僕が気に入らなければ、断罪でもなんでもすればいい」

「そう、全ての罪は君にある」

甘粕は両手で手刀を作り出す。

間合いにはまだ入っていない。

周りには、街にいた人間達が集まり始めている。

時間がない。

一気に間合いを詰めると、同時に甘粕が右手の手刀を振り下ろす。

手刀から数センチは範囲内。

攻撃の軌道を見極め、左を前に半身になって避ける。

手刀を振り下ろした先のコンクリートには、地震でも起こったかのような亀裂が入る。

気にせず、アバラにある白い空気目掛けて拳を打ち込んだ。

爆発を起こし、後方へ飛ぶ甘粕。

しかし、しっかりと地面へと足をつけており、ダメージが深いとは思えなかった。

「自分から、避けたか」

爆発する瞬間に、後ろに飛びのいたのか。

「先ほどの石といい今といい、君も私と同じく不思議な能力を使えるようだね」

「だから、何だ?」

「ますます、どうにかしなくてはならなくなった」

甘粕が僕に襲い掛かってこようとした時、後ろから誰かに羽交い絞めにされた。
< 96 / 112 >

この作品をシェア

pagetop