夜獣2-Paradise Lost-
街の人間と能力者二人は間違いなく、勝つ事は出来ない。

甘粕は、僕を裁く事に集中している。

追って来る可能性が高い。

一先ず、街から離れた方がいいだろう。

群集の中をかき分けて逃げようとすると、逃がすまいと身体を掴もうとする人間がいる。

僕は邪魔する者に対しては容赦なく殴り、他の奴らも押しのける。

数秒後には群集の中から抜け出す事が出来た。

走って河岸を変えようとしていると、背後から見物客の一部が追いかけてくる。

僕を警察に引き渡すつもりなのだろう。

報復を終えるまでは、お縄につくつもりはない。

大通りを、裏道を縦横無尽に行き渡る。

街中のありとあらゆる場所を時間をかけて、走り続けた。

普段から何もしていない人間は、途中でリタイアしていく。

しかし、運動をしている人間もいる。

体力を消耗しすぎるのは、不利になる原因。

甘粕との戦いは終わっていない。

傍にある一軒家の塀を飛び越え、身を潜めた。

追手は家を通り過ぎていき、僕を見失う。

「はあ、はあ、ふう」

息は多少切れているが、問題はない。

体力は残っているし、まだ闘える。

塀の中で座っていると、家から出てきた五歳くらいの女児が前に座った。

「すぐ消える。家に戻っていろ」

「お兄ちゃんは何でそんなに怒っているの?」

自分の前に座った事もそうだが、親に言いに行くなりしないのには驚いた。
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