夜獣2-Paradise Lost-
「殺したい、奴がいるからだ」

「殺したいって、何?」

女児が『殺す』という意味を知らないのは当然の事だ。

「生き物を二度と起きなくする事だ」

「起きなくなったら、寂しいよ」

誰かと似た、悲しい眼で僕を見る。

きっと、理解は出来ないだろう。

「それでも、やらなくちゃならない」

薄まり始めた狂気が、再び浮上し始める。

「お兄ちゃん、こわいよ」

僕の顔を見て、悲しみから恐怖へと顔が変わっている。

「そうだ。だから、もう関わるな」

立ち上がり、女児に背中を向けた。

いつかは、何もかも理解する事になるだろう。

今は必要の無い事だ。

「いい女になりたければ、屑に近づくな」

真っ直ぐな眼を持つ女児と別れた。

塀の外に出ると、三人の男が駆けつけた。

諦めずに追いかけてきたのだろう。

邪魔するのなら、なぎ倒すだけだ。

「お前、人を襲っておいて、何も罰せられないってのはおかしくない」

三人は僕を取り囲む。

見知らぬ男が襲われたというだけの理由で、そこまでする必要があるのか。

「消えろ」

どちらにせよ、敵である事には変わりは無い。

「俺達、チャンスだよなあ」

理由を無理矢理作って、僕を甚振るつもりか。
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