想うのはあなたひとり―彼岸花―
「え…本当ですか?」
「うん。これからのこととか話してるとき、いつも妃菜子ちゃんのこと聞くんだ。前に“高校に合格したか”って聞かれて、受かったよって言ったらすごく安心した表情してさ。椿くんのあんな表情初めて見たよ」
「…椿、そんなこと言ってたんだ。窓…開けてもいいですか?」
保科さんが言った言葉が異常なくらい私の体を熱くさせた。
火照った体を冷まさなくちゃ。
「もしかして、照れた?」
そう笑いながら、助手席側の窓を開ける保科さん。
よく分かったわね、なんて私は保科さんを褒めたりはしなかった。
「もうすぐ着くからね」
「あの…ひとつだけ教えてください…」
いつになったらこの空の下を椿と歩けるのでしょうか。
「椿の更生期間はどれくらいになりますか?」
私はできるだけ早く、椿の手を握りたいの。