想うのはあなたひとり―彼岸花―


「え…本当ですか?」



「うん。これからのこととか話してるとき、いつも妃菜子ちゃんのこと聞くんだ。前に“高校に合格したか”って聞かれて、受かったよって言ったらすごく安心した表情してさ。椿くんのあんな表情初めて見たよ」




「…椿、そんなこと言ってたんだ。窓…開けてもいいですか?」



保科さんが言った言葉が異常なくらい私の体を熱くさせた。
火照った体を冷まさなくちゃ。



「もしかして、照れた?」



そう笑いながら、助手席側の窓を開ける保科さん。
よく分かったわね、なんて私は保科さんを褒めたりはしなかった。



「もうすぐ着くからね」




「あの…ひとつだけ教えてください…」




いつになったらこの空の下を椿と歩けるのでしょうか。




「椿の更生期間はどれくらいになりますか?」




私はできるだけ早く、椿の手を握りたいの。





< 102 / 385 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop