想うのはあなたひとり―彼岸花―
真っ暗だった世界にあなたが加わったことで一瞬にしてこんなにも明るくなるなんて。
暗かった待合室が、明るくなった。
まるでどこかの貴族のお城のように。
あなたが現れたことで私の世界…輝いたの。
どくん、と胸が躍る。
久しぶりに見た椿は少し髪の毛が短くなっていた。
グレーの部屋着のようなものを身に纏い、こちらを笑顔で見ていた。
優しい、あの笑顔。
私の大好きな、あの笑顔。
「元気にしてた?」
そう言って私の目の前に座る椿。
またあなたに会えたことが夢のようで体が固まって動かない。
瞳に吸い込まれていく。
やっぱり私はあなたの虜なのだろうか。
今すぐにでもこの壁を取り壊して抱きしめたい。
「元気だったよ。椿は?」
どうしよう。
上手く笑顔が作れない。
「まぁまぁかな。高校、合格おめでとう。制服似合ってるよ。すごく可愛い」
この言葉を聞いた瞬間、心や表情が溶けていくのが分かった。