想うのはあなたひとり―彼岸花―


私の変化に一番早く気づいてくれるのはいつも椿だった。
私の背中を押したのもあなただった。


私たちは出逢わなければ良かったのかなって今でも後悔しています。




「高校は楽しい?」




「まだ慣れないけど楽しくなりそう…かな」




椿にそっくりな人に出逢ったなんて言うのはよそう。
言ってどうなる?
無駄なこと言わなくてもいいよね。



「そっか…。俺さずっと考えてたんだよね。もし一緒の高校に行けたら、毎日学校一緒に行って…自転車を二人乗りして笑いながら登校していたかなって」



心が揺れた。
外の波風のように。



「でも俺、運転下手だから妃菜子に怪我させちゃうね」




“軽い怪我で済んで良かったな”




あなたはあの場所にいたの?




“俺の運転テクニックが上手かったってことで”






私は椿の言葉に、笑うしかできなかった。




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