想うのはあなたひとり―彼岸花―
急に胸が痛くなった。
そのうち苦しくなって過呼吸になるのではないかと思うくらい。
椿の後ろに皐の残像が浮かぶ。彼は私を真っ直ぐ見つめて今にも泣きそうな顔をしていた。
まるで…私に助けを求めているようだった。
「ねぇ、椿?聞いて欲しいことがあるの。」
「ん?なに?妃菜子の力になれるなら聞くよ」
私にはどうすることも出来ないから…。
泣きそうな皐の顔をどうしたら笑顔に出来るのか教えてください。
勝手な奴なことくらい分かってる。
でも私には椿しかいないもの。
「もし目の前に泣きそうな人がいたのなら…椿はどうする?」
難しい答えが見つからないのは当たり前なこと。
私は難しい答えばかりを追っていた。
でも椿は簡単な答えを見つけてくれた。
私の目を見つめて、見失わないよう、強い眼差しでこう言った。
「俺はいつも妃菜子にしていたことをすると思う。」