想うのはあなたひとり―彼岸花―


立派に咲くツバキは、あなたの存在のようだった。
逞しく、勇ましく。
あなたにぴったりな名前だと思ったの。


行きの電車と同じ、緑色の椅子に座り、外をぼーっと見上げる。
まだ神様は絵描きをしているの?
いつになったら空色になるの?

そしてあることを考えていた。椿が言った言葉の意味。


「妃菜子にしていたことをすると思う」



私にしてくれていたこと。
椿がいつも私にしてくれていたこと。

よく思い出して考えてみる。
椿は私の感情にいち早く気づいてくれていた。
そして笑顔で私を見てくれて…
「妃菜子は悪くないよ」と頭を撫でてくれる。




「…あ、そういうことか…」



椿が私にしていたことは、些細なことだった。



昨日、皐に言ったように、皐の心が闇ならば私が光を与えてあげる。




椿がそうしてくれたことだから。




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