想うのはあなたひとり―彼岸花―


電車に体が揺られて二時間弱。高校のある駅に着いた。
昼間なのか妙に静かだ。
昨日の朝はあんなにも混んでいたのに。


皐と出逢った道を歩いていく。

なんだか会いたくないな。
昨日あんなことあったし…
でも椿に会えたからテンションはそこまで低くない。


桜の花びらで埋めつくされたアスファルトは絨毯のようだった。
レッドカーペットより豪華だ。
淡いピンク色の絨毯なんて、見たことないでしょう?


校門をくぐり、教室を目指す。まだ慣れないため上を見ながら教室を探す。




「あった」



意外に早く見つかる教室。
私方向音痴じゃあなさそうね。
少し学校がざわついていた。
今日から午後まで学校なためみんなお昼休憩をとっているのだろう。


鞄をぎゅっと握り、教室へ一歩踏み出す。




「あ!妃菜子ちゃん!」




名前を呼ばれた瞬間どきっとする。
この声は…弘樹だ。




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