想うのはあなたひとり―彼岸花―


弘樹の声が聞こえた場所に皐がいると感じた。
だってあの二人は自転車を二人乗りするくらい仲がいいのだから。


おそるおそる声の聞こえた方へ顔を向けると、そこには笑顔でこちらに手を振る弘樹と女の子の姿があった。

あれ?予想が外れた。
弘樹のところには皐がいなかった。

周りを見渡しても皐はいない。どうしたのだろう?
もしかしてまた女の子にちやほやされているとか?


何か、むかつく。


弘樹に挨拶するため、弘樹たちのいる窓側に向かった。
机に広がるのは惣菜パンの袋や紙パックのジュース。
やはり昼ご飯中だったか。


「来るの遅かったね!てゆか髪の毛切った!?かなり短くなったね!」




「あ…うん。無性に切りたくて切ったの」




「髪型似合ってるよ!でも非常にまずいね。今の妃菜子ちゃんはかなりまずいしやばい」




眉間に皺を寄せて口をヘの字にする弘樹。

なんで“まずい”や“やばい”なの?



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