想うのはあなたひとり―彼岸花―


何度謝っても何度泣いても、奈月は許してくれないよね。

本当にごめん。
俺があの時…お前と離れなければ良かったんだよな…。



この日を境に、俺たちの距離は縮まった。
お互いのことを呼び捨てにし、時間が合うときは一緒に帰っていた。

周りはそんな俺たちを冷やかしていたけれど、関係なかった。
別に付き合っているわけでもないし、ただ仲が良いってだけ。

でも俺は奈月との関係をもっと縮めたいと思っていた。
奈月はどう思っているか分からないけれど、俺だけを見て欲しかった。


だからあの日から教室に花がなかったことはない。
俺が毎日のように花を買ってきて、花瓶に飾っているから。


母親に花代を請求しても何にも言われない。
むしろ褒めていた。
「生き物を大事にすることは間違っていない」と言ってくれた。


俺は奈月が幸せになるのならそれでよかったんだ。



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