想うのはあなたひとり―彼岸花―



「事件になにか関わってるか調べるために中は読ませてもらったよ。ごめんね、勝手なことして」




「いいです。読めるだけで…俺は救われますから」




そう言った皐の横顔から強さが感じられた。
少し前までは奈月さんとの過去を話ながら泣いていたのに、今ではそんな弱い部分など微塵もなかった。
短時間で皐は強くなったのかな。



「早く読むといいよ。用件はそれだけかな?僕仕事があるから戻るね」




「保科さん、ありがとうございました。皐もお礼言って?」




「本当にありがとうございました!」




深々と頭を下げる私たち。
保科さんは「そんなのいいから」と照れ笑いしていた。



良かったね、皐。




「今日はわざわざ来てくれてありがとう。気を付けてね。妃菜子ちゃん、また会いに来てあげてね。待ってるから」




にっこり笑い、私たちから去っていく保科さん。
皐はなにか思っただろうか。



保科さんの意味深な言葉に。




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