想うのはあなたひとり―彼岸花―
素直になれなくてもなれない私がいた。
言うのが怖かった。
皐は自分の過去を全て打ち明けてくれたのに私は嘘をついた。
卑怯だよね、知ってるよ。
だから私を傷つけてもいいよ。
「いいの、大丈夫。それよりその手紙いつ読むの?」
「…今読みたいかな。静かな場所ないかな…」
「あ、あそこならいいかも…」
地元の街なら私に任せて。
私も久しぶりに行きたいの。
椿との思い出の河川敷。
ここからあまり遠くないし、のんびり流れる川を見ながら思い出に浸るのも悪くないでしょう?
私は皐にそこへ案内した。
何も変わらない道。
何も変わらない街並み。
よくここで椿がたい焼き買ってくれたな…
あんこかカスタードどっちにしようかいつも悩むの。
結局椿があんこで私がカスタード。
そして二人で半分ずつにして仲良く食べてたっけ…。