想うのはあなたひとり―彼岸花―


すぅっ深呼吸をして、目をゆっくり開けるとそこには紅色に染まって太陽があった。
私たちを優しく包んでくれている。
反射する水面が瞳を輝かさせてくれる。

そう思ったら少しだけ泣きそうになった。




「本当に私が読むの?」




「うん、読んで。目閉じて聞いてるから」




そう言って目を閉じる皐。
ちょっと待って。
私、音読苦手なんだよね。
国語の時間、音読のとき嫌で嫌で仕方なかった。
のに奈月さんの手紙を読むって…。
国語より重要じゃない。



でも皐のお願いだから仕方ないか。
私が声を出して読むことによって少しでも元気になるのなら読んであげるわよ。



白い封筒から便箋を取り出す。中から二枚の便箋が出てきた。


そして手紙を開く。
奈月さんの性格が文字から溢れていた。
達筆で繊細な字は奈月さんを表しているようだった。






「…皐へ…」






河川敷に広がる私の声。
奈月さんの手紙は皐へのラブレターでした。




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