想うのはあなたひとり―彼岸花―
熱烈なラブレターを読み終わったあと、私は妙に恥ずかしかった。
私が書いたものではないのだが、声を出して読んだら感情移入してしまい泣きそうになった。
「皐は幸せだね。こんな手紙を書いてくれる人がいたんだから」
「…馬鹿だなぁ、アイツ…」
涙を流しながら小さく笑う皐。その横顔を見ていたら胸の奥の方がちくりと痛んだ。
私は無意識にこんな行動をしていた。
手を伸ばし、皐の頭を撫でていたのだ。
「…大丈夫?」
「なに?慰めてくれてんの?」
迷う仔犬を宥めるように。
優しく、温かく。
「なんか、こうしたかったの」
そう言うと皐は私を真っ直ぐ見つめた。
髪の毛から覗く潤んだ瞳。
囚われる体。
目が離せない。
金縛りにでもあったのかな。
先ほどまで顔を出していた太陽が恥ずかしそうに雲の中へと隠れた。
「なぁ、妃菜子…」
近づく皐の顔。
そして皐は私の唇にキスをした。