想うのはあなたひとり―彼岸花―
今日は何だか朝食を食べる気にはならなかった。
水しか喉を通らなかった。
制服に着替えながら憂鬱さと闘う。
そんな時、ポケットに違和感があった。
「…忘れてた」
皐の連絡先。
もう折り目が幾つもついていてくしゃくしゃだ。
昨日のあの少年が拾ってくれなかったら、今ごろ私の手元にはなかった。
お礼くらいちゃんと言いたかったな。
リビングの机に置いてあった携帯を取り、私はメモリを開く。
私と皐は似た者同士かもね。
だって私の携帯も寂しいもの。
父親、保科さん、小絵ちゃん。
三人しか入っていない。
寂しすぎるメモリを見た私は少しだけ笑えてしまった。
それはまるで私の存在価値を表しているようだった。
これだけは寂しいから、あなたを登録してもいいかな?
4件目。
名前 美波 皐
ヨミ ミナミ サツキ