想うのはあなたひとり―彼岸花―
どうしてそんな表情したのか。
ただ私の言ったことに驚いただけなのか。
それか他に理由があるのか。
そこまでは問い詰めないでおこう。
静かな空気が流れる。
椿の後ろにいた監督官と目が合った。
何か答えてよ。
答えないのなら話し続けるよ。
「…だから皐がいるとね、椿といるように感じて…安心するの。椿と同じ高校に通ってたらこんな感じかなって思ったり…」
「そうなんだ…それは良かったね」
椿の表情が無くなっていく。
頑なに口を閉ざして、私の瞳を見てくれない。
どうしたの?
何か言ってよ。
言ってくれないと不安が募っていくよ。
もしかして…気づいちゃったかな。
…皐とキスをしたこと。
私は椿に元気を与えることができないのでしょうか。
だったら私の存在は一体何ですか?