想うのはあなたひとり―彼岸花―


早く大人になりたかった。
大人になったら椿に会えると思っていたから。
でも皐に会って気付いたの。
今を大切に生きていきたいって。


でも皐は私を嫌いになった。
特別から、他人に変わった。
どうしたら…いいの?


もう…嫌だよ。
なんか…疲れちゃった。




アスファルトの冷たさが気持ちがいい。
降り続ける雨音が妙に心地よい。




…そして私はその日から外へと出なくなった。
学校にも行かなくなった。
今は皐に会える自信がなかったから。
どれだけの時間を無駄にしたかわからない。
答えを求めようとしても答えがない。
でも見つけようとしてしまう自分がいた。



そんな時、静かな部屋に携帯が鳴った。
これは着信音。
私はベッドから起き上がり、デスクに置いてあった携帯を取る。




着信 小絵ちゃん




「…もしもし?」




『やっと電話に出た!何でメールも返してくれないの!?どうしたの?』





「何でも…ないよ。ただ体調悪くて」





『妃菜子ちゃんが学校来なくなった日から皐も来てないよ?何かあったんでしょ?』






…え…今なんて?




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