想うのはあなたひとり―彼岸花―
嘘でしょう?
皐も学校に来ていないの?
どうして?
私に気を使ってるから?
それとももう私に会いたくないから?
携帯を握る手が強くなる。
「…皐はどうして学校に来ないんだろ…」
『聞きたいのはこっちだよ。あ、ちょっと待って。弘樹が代わってって言ってるから代わるね』
小絵が弘樹と電話を代わった。次に聞こえてきた声は弘樹。
なんだかいつもの声より低く聞こえる。
電話だからかな。
『もしもーし妃菜子ちゃん?皐に連絡しても返ってこないんだよね。まじアイツ何やってんのかな?家もわからないしさ。今度バイト先行ってみようかと思ってて』
「…待って!私に行かせて!皐が学校に来ないのは私のせいだから…私が行く!!」
『そっか。そう言うと思った。バイト先はS町の駅前の繁華街にあるバーだよ。今から行くと夜近くになるから、気をつけてね。あのへん治安良くないからさ』