想うのはあなたひとり―彼岸花―


S町は、私の地元。
繁華街があるのも知ってる。
治安があまりよくないのも知ってる。
でも行くしかない。
皐に会って話をちゃんとしなくちゃいけない。




「…ありがとう。弘樹くん…」



『二人に何があったか知らないけどちゃんと話しなよ?自分の中に溜め込んでいてもそれは辛いだけだから。楽になるかわからないけど伝えた方が絶対いいよ。頑張ってね、気をつけて』



弘樹の温かい言葉が胸に染みる。
冷めていた心が温もりを再生する。
頑張って、伝えるよ。
信用を取り戻すために頑張るから…。



「…ありがとう」




『妃菜子ちゃん?小絵だよ。あたしね、妃菜子ちゃんと皐お似合いだと思うの。二人が一緒にいるところを見ると落ち着くんだ。頑張ることはいいけど無理しないでね。何かあったらすぐ連絡してきて!助けに行くから!」





人間は温かい。
私が冷たいだけ。
忘れていた温もりが、電話越しに伝わってくる。




私はあなたたちと友達になれて本当に良かった。




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