想うのはあなたひとり―彼岸花―



「更生期間が終わるまで月に一回だけど二人を会わせたかった。ずっと…二人を見守りたかった。本当にごめん…」



深々と頭を下げる保科さんを見て私は息をすぅっと吸った。
罵声なんて浴びせない。
保科さんは私たちのために頑張ってくれたのだから。

今は感謝だけです。




「…どうして…椿は自分から命を絶ったのでしょう…か」




虚ろな瞳で保科さんを見る。
涙を流しながら、私に視線を向ける保科さん。




「それ…は…分からない。」




「じゃあ…どうやって…椿は死んだのでしょうか…」





「死因の詳細も…教えられないんだ。ただ椿くんは自殺したと…しか僕からは言えない」





…どうして。
どうして教えてくれないの?
私は椿の恋人なのに。
椿がどのように息を引き取っていたか、最後に何を思っていなくなったのか。



それくらい…教えてよ。




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