想うのはあなたひとり―彼岸花―



「保科さん、妃菜子は椿の恋人なんですよ?それくらい言ってあげてもいいんじゃないですか?そんないきなり自殺したなんて言われて納得できませんよ」



間に割って入ってきたのは皐だった。
皐は私をフォローしてくれた。それが何だか有り難かった。
もしここに私しかいなかったら、ただ涙を流して時間が経過していくだけだから。




私は違和感を覚える。
皐の言葉に戸惑っている保科さんに。
その戸惑いは、椿が突然自殺したのは自分のせいだというものなのか。
それとも皐の言葉が当たっていて返す言葉を探している戸惑いなのか。


保科さんの応えを待ってみる。



「確かに妃菜子ちゃんは椿くんの恋人。でも被害者でもある。本当なら面会も出来ないんだ。今回のことも本当なら伏せておくことも出来た。妃菜子ちゃんがショックを受けると思ったからね。でも椿くんの机にこれがあったから…言わなくちゃって思ったんだ」





そう言って私に差し出したのは白い封筒だった。





< 355 / 385 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop