想うのはあなたひとり―彼岸花―
隣で静かに泣く私を皐は頭をずっと撫でてくれた。
伝わる温もりが温かすぎて加速する。
「保科さん…ご家族の方がお見えになられました。」
すると事務の人がドアをノックし、こう言った。
ご家族というのは…椿の家族だろうか。
でも椿の両親は離婚していて父親しかいないはず。
椿のお父さんとはあの事件以来会っていない。
元気にしているのだろうか。
椿が自殺したと聞いて飛んできたのかな。
私と一緒だ。
「分かった。すぐ行くよ。妃菜子ちゃん、この手紙のことは内緒にしておいて欲しい。僕の話で納得はしてくれないとは思うけど…いつか言える日が来たら言うから…」
「分かりました…」
私は手紙を持って立ち上がる。「大丈夫か?」と皐は私に声を掛けた。
…皐、ごめんね。
もし私と出逢っていなかったらあなたの人生は狂わなかったのに。
全て私が悪いの。