想うのはあなたひとり―彼岸花―
目の前で突如起こる出来事についていけない私の脳。
体はどうやらついていっているみたいだ。
ほら、涙が止まらない。
「…お前…なんでここに?」
「それはこっちのセリフだ。親父こそ何でこんなとこにいんだよ。」
「俺は…用があってだ…」
そう言って言葉を濁す。
お父様、私のこと気づかないですか?
それもそうですよね。
半年以上顔を合わせていなかったですものね。
「用ってなんだよ。」
私はゆっくりと顔を上げる。
私と目が合った瞬間、ようやく気付いたようだ。
私の存在を。
「…ひ…なこちゃん?」
やっぱり私はこの世界から嫌われているようね。
人間に嫌われる彼岸花のように、私は神様から嫌われているのよ。
「…お久しぶりです。椿の…お父さん…」
まだ子供な私たちにはそれは酷だった。