想うのはあなたひとり―彼岸花―
突然聞かされた衝撃の真実を私はただぼーっとしたまま聞いていた。
椿のお父さんを皐が「親父」と言った瞬間に何となくわかっていたから。
でもそれは99%の確率で、残りの1%は希望だった。
“全部嘘です”という叶いもしない希望だった。
目を開けるとやはり花畑ではなかった。
ただグレー色に染まったロビーだった。
崩壊する音はあまりにも静かすぎた。
けたたましい音を出して壊れていくものだと思っていたのに、それは静かすぎて逆に不気味だ。
そんな音を間近に聞いてしまった私は、世界を恨む力すら残されていない。
ただ、泣くだけ。
「な…なに言ってんだよ。そんな冗談いらねぇから…」
「冗談なんかじゃない。椿と皐は戸籍上ちゃんとした双子だ。お前たちが1歳もしないうちに俺たちは離婚してしまって俺は椿を、妻は皐を引き取った。今まで隠していて悪かった…。こうなる前にもっと早く言っておけば…良かった」