想うのはあなたひとり―彼岸花―



なぜ、こんなにも苦しいの?
私は誰も愛してはいけないの?
母親に愛されなかった私はずっと誰にも愛されてはいけないの?

そして誰も愛してはいけなかったの?


私が椿を愛したから、椿はいなくなってしまったの?
じゃあもし皐を愛したら…皐もいなくなってしまうの?




だったら…私は消えた方がいいのね。
神様に嫌われているのなら、この世界からいなくなった方がみんな幸せに暮らせるのね。




生まれてきて、ごめんなさい。


ねぇ、お母さん。
私が生まれてきたときあなたは何て思いましたか。
一瞬でも「幸せ」と思ってくれましたか。
思ってくれたのなら私はそれだけで十分です。



椿が残した手紙をぎゅっと握り、私は皐の体を突き放した。



これ以上私に関わると皐まで不幸になってしまう。




私はよろめく足取りで少年院から出ていった。
ひたすら走った。


流れる涙は雨のように、アスファルトへ滲んでいった。






雲ひとつない空。
この先にあなたがいると思ったら、何も怖くないと今では思っている。





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