想うのはあなたひとり―彼岸花―



“妃菜子へ”







こんな手紙を出してごめんね。妃菜子がこの手紙を読んでいるとき、きっと泣いていると思う。
でも最後まで読んで欲しいんだ。
目を反らさずに読んで欲しい。妃菜子は俺と出逢って後悔をしていますか?
多分自分を責めてると思う。
「私が悪い」とか、「私が椿を苦しめた」とか。
そう思ってるだろ?
それは間違ってるよ。
俺は妃菜子に出逢って幸せだった。
犯罪を犯したのはまだ俺が未熟だったから。
妃菜子を助けるにはあぁするしかなかった。
そうしたら妃菜子を助けられるんじゃないかなって思ったから。
俺は妃菜子を救いたかった。
だから後悔はしていない。

あの事件のとき、妃菜子のお母さんに言われた。
妃菜子の存在価値。
それに俺は腹が立ったんだ。
妃菜子を守りたかった。
どうしても自分のものにしたかったんだ。
でもごめんな。
俺は妃菜子の傍にいてあげられることができなくって、結果的に妃菜子を苦しめていた。





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