想うのはあなたひとり―彼岸花―


きっと妃菜子は毎日泣いていたと思う。
本当なら頭を撫でてやりたかった。
でも俺にはそうやれる資格がなかった。
どうしても妃菜子と繋がっていたくて、妃菜子の成長を見たくて…保科さんに無理言って頼んだんだ。
月一回の面会を。
30日の中の1日だけでも妃菜子に逢えると保証されるのなら毎日頑張ろうって思えた。
妃菜子の笑顔が見たくて毎日一生懸命生きた。
でも妃菜子はあまり笑わなくなっちゃったね。
それは俺のせい。
妃菜子から笑顔を奪ったのは俺のせいだ。

ある時、妃菜子が皐の話をしただろ?
俺はその時気付いたんだ。
妃菜子に笑顔が戻ったって。
そうしてくれたのは皐だって。俺さ…知ってたんだ。
皐と俺が双子だって。
毎年のクリスマス、母さんが父さんに内緒でプレゼントをくれてた。
その時よく皐の話をしてたんだ。
写真を見せてくれて、びっくりした。
俺によく似てるって。
それもそうか。双子だもんね。皐が天城高校に入学するって聞いてびっくりしたよ。
だって…妃菜子と一緒だったから。




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