想うのはあなたひとり―彼岸花―


妃菜子、人参入り焼きそば好きなんだって?
皐から聞いたよ。
何で俺に教えてくれなかったの?
そうしたら作ってあげたのに。俺、意外と料理出来るんだよ。信用できないって?
信用してよ。でももう作ってあげられない。
ごめんな、妃菜子。
お前を一人にしてしまって。
でも俺はこうするしかないって思ったんだ。
更生期間は何年になるかは分からない。
その間ずっと妃菜子を待たせるのは辛かったんだ。
それに…妃菜子は皐のことが気になるんだろ?
あんな嬉しそうに話す妃菜子を見ていれば分かるよ。
頬をピンク色に染めてさ。
可愛かったな。
皐なら安心して妃菜子を任せられる。
恋愛ってさたまに引くのも大事だと思うんだ。
だから俺が身を引くよ。
だって更生期間を終えたって世間ではずっと俺は“あの事件”の“加害者”妃菜子は“被害者”なのだから。
それは永遠に消えない。
俺が作ってしまった深い傷だから。

幸せになって欲しい。
妃菜子、お前は神様を恨んでいるだろ?




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