想うのはあなたひとり―彼岸花―


椿…椿…椿。
暗闇の中であなたの名前を呼ぶ。
でもその言葉は浮遊し続けいずれ消えて無くなるのだ。



椿の手紙を読んだ私は他人の視線など気にしずに叫びながら泣いた。
洪水のように流れる涙は、私の顔を簡単に濡らしていく。
手紙に詰まった椿の想いが胸に染み渡る。


椿は気づいていた。
私の変化。
だから自分から身を引いた。
理由は自分は幸せにできないと思ったから。
椿は、加害者。
私は、被害者。

一生消えることのないレッテルが椿は辛かったんだ。



椿の純粋な想いが、椿の愛が、椿の広い心が…



私の体全体に響いていった。




椿が幸せだと言ってくれるだけで私の心は軽くなる。
椿を幸せにできていたとそう言われている気がしたから。



もう神様を憎まないよ。
神様は私に強くなって欲しいと願っているから試練を与えてくれるんだ。




約束するよ、椿。




また再会できたら笑顔で。






「妃菜子!!」





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