想うのはあなたひとり―彼岸花―


そんな時、後ろから声が聞こえてきた。
私はゆっくり後ろを振り返る。そこには息を切らし、呼吸を整えている…皐がいた。




「やっぱり…ここにいた。椿に教えてもらった通りだ。妃菜子は悲しくなったら絶対ここにくるって椿が教えてくれたんだ。来てみたら案の定そうだった」




「え…椿が…」





「うん。椿に感謝だな。妃菜子を見つけさせてくれてありがとうってお礼言わなきゃ」




そう言って私の横に座る皐。
私は下を向いて涙を拭いた。
沈み出す太陽。
私たちの体をオレンジ色に染めていく。





「親父から全部聞いた。すげぇ驚いたけど今更両親を恨むことなんて出来ない。俺は生まれてきて良かったって今は思えるから。それは妃菜子と椿に出逢えたからだ。俺はお前たちを忘れるなんて出来ないから…それに…」





「それ…に」







椿、私はもう一度…







人を愛したいと思いました。





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