想うのはあなたひとり―彼岸花―



16歳の私たちは、とても孤独だった。
世界から憎まれる人間だった。
そして私は真っ赤に染まる彼岸花のように一人だった。
でも救ってくれたのは、椿。
守ってくれたのは、皐。


生きることを学ばせてくれた。死にたいと願った私を「生きたい」と変えさせてくれた。
授かった命が尽きるまで大事にしていきたい。





「まさかあの二人が結婚なんてね?」





未だに信じられないような口調で話すのは弘樹だ。
黒いスーツにストラップのネクタイ。
弘樹に抱っこされているのは、3歳になる愛娘の芽衣(めい)ちゃんが弘樹の髪の毛をいじっている。




「まぁ何となく分かってたけどね。付き合ってるって聞いたときの二人を見てたらさ。知ってる?あの時の女子の反応すごかったんだから。で、リュウくん?奥さんはどこ?」





隣にはピンクのドレスワンピースを着た小絵。
小絵に肩を叩かれるのはリュウだ。
片手にシャンパンなんか持っちゃって、洒落ている。





「あれ、玲奈がいない…トイレかな」






時間はゆっくりと。
ときに速く経過していく。





< 375 / 385 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop